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最終更新:12/29(水)  AVANTI戦記(仮)22話


『AVANTI戦記(仮)』

我等がギルドAVANTIの面子を、RPGの配役に当てはめたらどうなるか。
………そんな話が発展して出来上がった連載です。通称「RPG」。
基本的にマビ、ちょっと未来のウルラを舞台に、色んな漫画やゲームがごった混ぜ。
が、マビさえ分かっていれば問題なく読めたり。
7割以上ギャグ。その他はギルド面子の良心と苦労で出来ています。

ちなみになんで(仮)かって、いつまでたってもタイトルが決まらないから。
寧ろこれでいい気がしてきた。うん、これ正式タイトルでいいよねもう。


序章  問答無用の旅立ち

第1章 イメンマハ狂想曲   1 2 3 4 5 6 7  7.5

第2章 バンホに響く少女達の詩   8 9 10 11 12 13 14 15 16 16.5

間章  一つの幸福の残骸

第3章 激突!ダンバートン!   17 18 19 20 21 22 23 24

間章  一つの裏切りの情景

第4章 運命の地シドスネッター
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*****

Act 22 「勇者VS戦士」


「かくして、準決勝戦に勝利したのは山子であった。
敗北したラドは泣く泣くにーるを諦め、フィリアへ帰っていったのであった。
そしてラドを下し、トーナメントの覇者となった山子は借金を全額返済した。
その後大魔王の軍勢を破り、みしあちゃんとにーるちゃんを嫁にして幸せに暮らしました。
めでたし、めでたし!」


完!

いや、それは……。
「えっダメ?」
「普通に考えて駄目だろ。つーか、そんな妄想が出来るねぇちゃんが凄いよ。」

勿論言うまでもなく、山子の妄想による展開である。
まともに受け止めてはいけな……え?「そんな人いません」?それもそうか。
かくして、遂に準決勝戦の時間が来た。
Bブロックの覇者となり、決勝戦に進み出るのは山子か………それとも、ラドか。

「んな馬鹿なこと言ってるとほら、試合始まるぞ。」
「頑張ってゃまちゃ!ボク、応援してるからっ!」
「に、にーるちゃ………。うん、山子がんばる!超がんばる!
ラドなんて再起不能のけっちょんけちょんにするから!安心して!」

「……ぇ、ぇぇと……。出来れば、お手柔らかに……。」

とりあえず、山子の応援をしているグライヴと二ィル。
が、山子の対戦者が旧知のラドであるということもあり、心から応援できないのが現状だ。
……と言うか、勝敗云々よりもラドの進退が不安で仕方無い。さもあらん。

「おっと、もう時間だぜ!山子は行かなきゃならねぇ……。
待っててくれ、嬢ちゃん。勝利と言う手土産を持って、帰って来るからよ……!」


かくして、山子は格好良く闘技の場へと出て行くのであった。

「……えーっと、はーどぼいるど……?」
「本人はそのつもりなんだろうな……。」

………まぁ中身がアレなので、正直なんだかなぁと言った感じだったのは言うまでもない。

×××××

『皆様お待たせいたしました!準決勝、第一試合が間もなく始まります!
片やエルフなのに近接の方が得意な戦士、疾風のラド!
片や此処まで猿の被りものをして、その素性は一切不明な謎の女戦士!
一部じゃあれは本当に女かと囁かれてますが、とりあえず本人がそう言ってるので女です!』
「こらそこ実況おおおぉ!!」

かくして試合場に進み出た山子を待っていたのは、微妙な実況だった。
が、文句は言えまい。普段の行いと言うやつである。
寧ろ今も被り物を被ってる時点で、まぁ何も言えないだろう。さもあらん。

「全く、この山子を一体何だと思ってるんだか。
まぁいいや。とりあえず、ラドをぶん殴るのが今回の目的だしな!」

「……な、何か殺気が……。いや、戦うんだから当たり前だけど!」
『それではお二方、そして観客の皆様!準備はよろしいでしょうか!
―――シャラノワール杯、準決勝戦第一試合………開始!!』

実況が開幕を告げ、そしてその瞬間に湧き上がる歓声。
だが、戦の場に居る二人に、その歓声は耳に入らない。

まず先に手を打ったのは、ラドの方だった。
いきなり突進で山子に突撃し、怯んだ一瞬の隙を突いて片手剣での攻撃を繰り出す。
しかし山子もその一手を受けた次の瞬間、どかんと一発爆弾を落とした。

「~~~っ!」

そしてラドを自分から離れさせたところで、両手剣を構えて果敢に走る。
そのまま的確に狙いを定めてスマッシュを打ち込み、ラドを弾き飛ばす山子。

「よし、手応えアリ……!」
「真正面から行っても敵わない、か……!」

スマで弾き飛ばしたラドは、片手剣と盾を弓矢に持ち替える。
そうして、有無を言わさずその場から、山子をちくちくと撃ち始める。

「っ……!近接キャラだと思ってたのに、弓も出来るんかい……!」
「そりゃ一応、護衛としての必須訓練なもんで!
悪いけど、このまま遠距離から攻めさせてもらうぜ!」

「っと、あっぶね!」

その矢をぐるぐると前転しながら回避し、射程範囲外まで逃げる山子。
距離はとった。ここなら矢は届かない……が、こちらからも攻撃は出来ない。
しかし、こんなところで行き詰る山子ではない。

「――こんな時の為に、この剣があるんだとも!」
「?それは……。」

「……証の剣か。そういやまだ、使ってるとこ見たことないな。」
「そぅぃぇばそぅだね……。」

あの廃坑道で引き抜いた証の剣、碧の賢帝と紅の暴君を構える。
見たところは、単なる碧と紅の剣だ。だが、異常な魔力が保持されているのを感じる。
どんな能力があるかは分からない。けれど―――

「“行け”って言ってるんだよね、この剣どもが……!
当たって砕けるのは山子の専売特許、いくぜラド!!」


脳裏に響く謎の声に従って、射程範囲の外から中へと飛び込んだ!

「何だかよくわかんねーけど、チャンスか……!
こっちに届く前に打ち落とせば、オレの勝ちだしな……!」


懐に届く前に決着をつける。そう思い、ラドは矢継ぎ早に攻撃を繰り出す。
しかしその矢は山子に命中しているにも関わらず、対した威力を生まない。
ノックバックも無し、いわゆるカキーン状態である。鋼体って恐ろしい。

「っ……!なんで効かねぇっ……!」
「あたぼうよ、山子のにーるちゃんへの愛は止められん!
さぁ覚悟はいいか、積もりに積もった恨みの数々、今此処で晴らす!
―――“抜剣覚醒”!山子に力を寄越しやがれ魔剣ども―――!」



そして、世界が煌めいた。


「……いや、うん、そうなんだけどね……?」
「どーしたん、こーちゃん?」
「いや、確かにあの剣の分類は魔剣なんだけど……。
……勇者が使う以上、聖剣て言った方がいいんじゃないかと思って。」

「……あー……。」

観客席の片隅でそんな会話が交わされていたが、そんなことはさておき。

「……ふぅ!うん、こりゃいい。行くぜラド、受けてみろ!」
「ぉ……?って、うわっ!?」

閃光が消え去った場には、その身を白く輝かせた女が一人。
色合い的には、半神化的な感じである。
………だが、言わせてもらおう。猿の被り物のせいで色々と台無しである。
だがそんな被り物を被った山子が大好きだ、と作者は主張しておく。(←

「せーのっ、殺劇舞荒剣!」
「……って、それ作品違う―――!!

………そして、抜剣して力を得た山子の必殺技で、勝負は決まったのであった。




Next Story...Act 23 「勇者と賢者(そして、)」


×××××

用語解説 その4

『殺劇舞荒剣』と書いて「さつげきぶこうけん」と読む。
言わずと知れた765Talesの秘奥義の一つ。剣が拳の時もある。さつげきぶこーけん。
勿論間違いなく、サモナイの武器で繰り出す技ではない。まさに作品違い。
しかしAVANTI戦記(仮)は何でもアリなので、この際もう気にしないこと。

ちなみに書き忘れたが、件の剣は体力が0にならなくても任意で発動可能。
ただしカルマ値は上がる。やっぱり+3。100になるとバッドエンド確定。
今回の話で山子のカルマ値は上がった。勇者の証の剣なのに何故か上がる。
理由はまぁ言わなくとも分かるだろう。そう、勇者があんなだからである。



*****

Act 21 「戦闘開始!(一撃必勝!)」


「………あ、居た居た。おーい、みしあちゃーん。」
「あ、こーちゃん。どうしたのー?」

ダンバの闘技場、その客席の一角。二人の少女が、その場に居た。

「はい、これトーナメント表。もうすぐ開会式始まるってさ。」
「ふーん………あれ?」
「どうかした?」
「………ちょっと、懐かしい名前があっただけ。」
「そう、そりゃ良かった。………それにしても、細工面倒だったなー。
対戦カードをちょっと弄ればいいだけとは言え、やっぱ疲れるわ。」

「お疲れ様でした。………あ、ところできゃをちゃんは?」
「副業中につき、もうちょっと遅くなるってさ。」
「はーい。」

二人がそんな会話をしていると、闘技場全体が歓声に包まれる。
どうやら、開会式が始まったようだ。………それを見て、黒髪の少女は笑う。

「………ようやく、刻の審判が始まる。」
「………うん、そうだね。
勇み世を救う者じゃなくて、魔を統べ戦う王の時代になるんだ。」


そして赤い髪の少女も笑い、何も知らぬ民衆達が騒ぐ、開会式を見やった。

×××××

さて、今回のトーナメントは32人による対戦で、AブロックとBブロックに別れている。
順調に勝ち上がれば、Aブロックの第3戦目で二ィルとグライヴが当たることになる。
そして時をずらし、Bブロック4戦目………準決勝で、山子とラドがぶつかる。
ラドが目的を果たす為には、少なくとも山子を倒し、二ィルかグライヴを倒さねばならぬのだ。

………んでもって、今現在はAブロックトーナメント第3戦の直前。
即ち、二ィルとグライヴが戦う直前なわけでありまして―――

「にるちゃん、にぃちゃんに変なことされたら迷わず山子を召還してね。
にぃるちゃんの代わりに、悪逆非道なにぃちゃんをメッタメタにするから。」

「それやったら失格になるのはにるちゃんな上に俺はそんなことしない。」
「ふ、男はみんな獣だって姫が言ってたぞ!」
「………使いどころと使用目的間違ってる気がする………。」

まぁ、控え室はこんな感じ。

「………あ、もうこんな時間か。じゃあにるちゃん、そろそろ行こうぜ。」
「ぁ、ぅん!お手柔らかにお願ぃしますっ。」
「お手柔らかにしなかったら山子がゆるさねぇ。」
「………うん、がんばるヨ………。」

山子にぐっさりと釘を刺されたグライヴ。
とは言え、トーナメントは仁義なき決戦の場。流石の山子でも乱入はしない………と思いたい。

かくして互いに登用口へと向かい、あとは決戦の火蓋が切られるのを待つ身となり―――

「言っとくけど、負けたら次お城に戻ってきたとき、目いっぱいこき使うから。」
「………は い ?

………グライヴはそこで、恐怖の声を聞く羽目になったのであった。

「えっと………。魔王、様?」
「何かなグライヴ君。」
「な、何でこちらにいらっしゃるんですか………!」
「観光2割、後はお仕事が8割かな。
で、可愛い可愛い召使いがトーナメントに出るって聞いて、この通り応援に。」

「………それはアリガトウゴザイマス………。」

何故か、登用口のすぐそばに、魔王様こと輝二がいた。
………一応、此処ダンバは対魔帝国の中心となっている街だ。
そこに魔帝国のトップ2と言っても良い魔王様が、こうもあっさりいていいものだろうか。

「………さて、ちゃっちゃかお仕事しますかね。」
「………仕事?」
「そ、お仕事。みぃちゃんに任せようかと思ったんだけど、これはちょっとね。
これに関してだけは、自分がやった方が確実だし。………まぁ、そういうわけでグラ君。」

「………な、何でしょう。」

ぶっちゃけなくとも輝二に対して引け腰になっているグライヴは、恐る恐る言葉の続きを促す。
そうして輝二は、魔王と称されるのがよく似合う笑みを浮かべて、

「しっかり聞いててよ?これでもグラ君には、期待してるんだから。
―――大切な大切な、世界の変革の為のの生贄として。」

「………え?生贄、って………。」
「―――その内思い出す。自分の、真実に………。

Ma num ra teyys ween syec oz was en noglle guatrz,ee,
  (私は至って冷静に激しく黒い怒りの奈落の中にあり続けたい)
Ween colgen fayra,Race mea wis gigeadeth zeeth tie yor
  (凍てる業火に灼かれながら私を飾る首飾りはおまえを縛る鋼鉄の鎖)

―――“DESPEDIA”!」

「………つっ゛―――!?」

×××××

「………?」
「ん?どうかした、にぃるちゃん。」
「今、何か聞こえたょぅな………?」
「?この通り、歓声ならめっちゃ聞こえるけど?」
「ぃゃ、そぅじゃなくて………。気のせぃかなぁ………?」

グライヴの居る場所とは別の登用口。
出番を待つ二ィルと、それを見送るべく付いてきた山子は会話を交わしていた。

「………ぁっ、ァナゥンス!」
「お、もう始まんのか。じゃあ行ってらっしゃい、にぃるちゃん!
にぃちゃんに手加減なんてものは一切無用、精一杯ぼこってきなさい。」

「ぁ、ぁはは………。ぅん、ぃってくるね!」

そうして、二人の決戦の火蓋は切られたのだが―――


―――この試合において二ィルはグライヴに惨敗、グライヴが準決勝に歩を進めた。けれど―――

「………ちょっと待った。いつの間に試合終わったんだ………?」
「………グラ君?どぅしたの………?」
「試合の内容なんて、ちっとも覚えてねぇ………。
それどころか、試合をやったことすら覚えてないんだよ………!」

「!?」
「確か、控え室でにるちゃんやねぇちゃんと話して………。
その後………。その後、どうしたんだっけ………?確か、誰かが………?」


―――その後、何やらよからぬ雰囲気が漂っていた。

×××××

「………こーちゃん、にーちゃんに何したの。」
「勿論、“お仕事”ですが?」
「………ほんっと、こういう時のこーちゃんって怖いよね………。
と言うか、みしあには出来ませんこんなこと。………外道に近くない?」

「まぁでも、コレが一番手っ取り早いじゃん。

Hyear.Ma num ra gyusya yorr,ee Dia oz ruinien
  (さあ偉大なる破壊の王よ)
Hyear,Ma num ra gyusya yorr dewee won clamour yor
  (さあ跪け 我は汝を支配せり)
en chess won vinan jambea mea,gigeadeth zeeth tie yor
  (そして吻けよ この白い足に 汝を縛る鋼鉄の鎖に)

………ってね。それに、今は効いてもこれからは効かないのは明白だよ。」

「………ま、そりゃそうだ。」




Next Story...Act 22 「勇者VS戦士」


×××××

今回、本文中に用いた曲「EXEC_DESPEDIA/.」(えぐぜぐ・ですぺでぃあ)
出典:アルトネリコ2、歌手:みとせのりこ



*****

Act 20 「幼馴染と家出少女」


「………で、何だっけ。わたしのにぃるちゃんに触れた大犯罪者を始末するんだっけ?」
「違う。全力で違う。」
「ゃ、ゃまちゃ、落ち着ぃて!ラドはボクの幼馴染なんだってばっ!」
「うん聞いた。だが許さん。にるちゃんと幼馴染なのが何で山子じゃないの。
「わー理不尽。悪いのラド君じゃないのになー。」
「俺どーなんだ………。」

さて、現在地は姫の店。
山子に投擲スキル(人間用)で一発KOを喰らったラドは、そのまま気絶した。
しかし二ィルの幼馴染でもある彼を、そのまま路上に放置するわけにもいかない。
なので仕方なく姫の店に運んだのだ。勿論運んだのはグライヴである。山子は一切手助けしていない。

「大体なぁ、二ィルが出てかなかったら俺だってわざわざウルラに来なかった。
つまり非は全面的に二ィルにあって俺にはない!」

「女の子に罪押し付けんなこの腑抜けがぁーっ!」
「ぐほぁっ!?」
「ら、ラドーっ!?」

▼会心の 一撃!

「あー………。大丈夫か?」
「な、んと、か………。」
「ふんっ、我が愛しのにぃるちゃんを侮辱するほうが悪いわ!」

そしてラドの言い分を聞き始めたのだが、そんなことを受け入れる山子ではなく。
ラドが発言するその度、アタック・スマッシュ・ウィンドミルの山である。………哀れ、ラド。

「それは分かった。けど、話進まないからちょっと山子は黙っとこうか。」
「ヤダ。にぃるちゃんに文句言う奴は全部ぶっとばs」
「借金増えても良いならやるといいよ^^」
「すいませんでした許してくだせぇお代官様。」
「分かればそれで良し。」

そんなこんなで話が一向に進まないので、主導権を姫キララが奪ったのであった。

「で、えーと?どこまで話したんだっけか。」
「ラドが澪の御子の護衛兵士だ、ってとこまで。」
「それだ。」

そしてようやく話は本題に戻る。
―――ラドは二ィルの幼馴染で、澪の御子の護衛兵士だという。
故に守るべき対象である澪の二ィルを追って、このウルラまで来たのだと。

「大体、御子姫その役目放り投げるとかどういう神経してんだよ!」
「ぅるさぃょラドっ!大体っ、昔はみぃちゃんに散々期待してたくせに!
なのに本物がボクだからって、ぁっさり鞍替えするなんて最低っ!」

「っ!………仕方ないだろ、本物しかフィリアを救えねぇんだから!
それになぁ、メタファリカさえ謳えばお前だってお役御免だろ!
堂々とフィリアだって旅立てるんだ、謳ってから行けばよかっただろ!」

「じゃぁ聞くけど、ぃつになったらメタファリカを謳ぇるの!?」
「なっ………!」
「みぃちゃんは凄く期待されたけど、まだ時期じゃなぃって言われてずっと謳ぇなかった!
だけど何年も何年も待って力つけて、謳って、失敗して………!
それで本当の澪はボクだって言われたけどっ、ボクが成功する可能性なんてぁるの!?
澪じゃなくてもぁれだけ凄い力を持ってたみぃちゃんも、ぃっぱぃ勉強して何年もかかった。
でも澪の勉強なんてしてなぃボクは、今からやったら何十年かかるの!?
本物なんだから謳ってから出てけとか言われても、困るんだょ!
そんなの待ってたら、みぃちゃんが遠くにぃっちゃってもぅ帰ってこなくなっちゃう!」

「そ、それは………って、違うだろそれは!
そもそもメタファリカを成功させられるのは本物だけ。お前がやれば絶対できるんだよ!
第一、お前は勉強なんてしなくても今だって十分詩は謳えてるだろーが!」

「普通の詩とメタファリカは違ぅって、散々ボクに言ったのはラドでしょーっ!」

ちなみに二ィル・ラド・mishiaの三人は同い年で、全員幼馴染らしい。
それ故に、かつて澪として扱われていたmishiaの護衛にラドは抜擢されたそうだ。
だが真実が明るみになり、護衛対象が二ィルに変わった。
………とは言え、昔からの幼馴染感覚が一向に抜けず、この通り延々と言い争いをする有様である。

「ぁぁ、もぅ!兎に角、ボクは帰らなぃからね!
どぅせ今帰ったって、メタファリカを謳うどころか歌詞だって教えてもらぇなぃんだから!」

「そりゃ、メタファリカの歌詞は秘中の秘から仕方ねぇだろ!」
「でもみぃちゃんは知ってるじゃんか!」
「そりゃ一度謳ったからだろ!謳う本人が知らなきゃ意味ねーだろうが!」
「だったらその謳う本人のボクはぃつ教えてもらえるの!?」
「そ、それは………。長老様にでも聞いてみろよ!」
「聞ぃたけど教えてもらぇなかったもんー!!」

ぎゃんぎゃんぎゃんぎゃん。………最早言い争いと言うより、ただの口喧嘩になっていた。
あーあ、とその状況を見守るグライヴと姫キララ。ラドに殺気を送る山子。
が。そこで姫が「ん?」と首をかしげた。………そう、確か。

「ラド。ちょっと今思い出したんだけどさ。」
「何が?」
「ラドって確か、シャラノワール杯の本戦出場権もってなかった?」
「………ああ、何となく腕試しで予選出たら、そんなのも貰ったな。」
「じゃあそれでいいじゃん。………山子、にるちゃん、グラ君、ラド。」
ん?
「シャラノワール杯本戦で、ラドが優勝したらにるちゃんは大人しくフィリアに帰る。
んで、山子以下3人が優勝したらにるちゃんはこのままウルラに残留。これで良し!」


間。

「………え、ちょい待ち。俺の条件不利じゃねーか!?」
「そこは一人でにるちゃん連れ戻しに来たラドの落ち度、ってことで。
って言うか本戦はトーナメントだから、最悪当たるのは誰か一人ってこともありうるし。」

「そりゃそうだけど………。」
「………えーっと。つまり公衆の面前でラドを殴れるってことでおっけ?」
「そゆこと。」
「分かった山子がんばるね!」
「………って、嘘だろ!?マジでそーなんのー!?」
「………ボク、賞品扱ぃ………?」

………かくして。
山子の借金をなんとかするべく出場したシャラノワール杯。
それは何でかしらんが、二ィルの進退もかかることになったのであった。


「………ちなみに姫。誰も優勝できなかった場合はどうなる?」
「皆仲良く店で働け。」
え゛。




Next Story...Act 21 「戦闘開始!(一撃必勝!)」


*****

Act 19 「武道大会(覇道を進め!)」


女が放った矢が乱れ飛ぶ。その全てが、眼前の敵へと降り注ぐ。
しかし敵も歴戦の戦士。突進を利用して勢いを削ぎ落とし、矢を放った主に向かう。
そしてそのまま、右手に持つ鈍器が弓の使い手を捉えた瞬間―――

「モブキャラの分際で山子に勝とうなんて、百年早いわー!!」

いつの間にか両手剣を構えていた女に、盛大にカウンターを喰らった。
―――そうして、それが決定打になった。



「おー、流石はねーちゃん。予選ぶっちぎりでクリア。」
「ぅん、そぅだね。ボクも頑張らなきゃっ。」

さて。現在地、ダンバートン北にある闘技場。
要塞都市と化したダンバは、今やそんなものまで存在している。

「………ぁ、次ボクだね。ぃってきます!」
「いってらっしゃい。頑張れー。」

そこで現在、武道大会の本戦に出るための選手を決める、予選が行なわれていた。
で、何故それに山子や二ィルが参加しているのか………話は、数日前にさかのぼる。

シャラノワール杯の優勝商品こと、ダイアンサスの花。
まぁ結論から言うと、これを売ればかなりの額になる。
寧ろ、売るのが勿体無いくらいの貴重品だ。
ならばそれを、借金代わりにするのはどうだろうか。
………姫キララにグライヴはそう持ちかけ、姫キララは承諾したのである。

「………お、にるちゃん勝った。これで3人とも、本戦出場決定だな。」

そうして予選に出て、見事3人とも本戦へと勝ち進んだ。
―――問題の本戦は明日。32人の猛者が集う、トーナメント形式だ。

×××××

「さてさて、それでは皆の本戦出場を祝して、乾ぱ―――」
「山子、ちょっと買出し行って来て。」
「エッ。」

闘技場から姫の店に戻ってきてしばらく。
今は休憩時間で店には山子たちしかいない為、のほほんとしていたのだが………。

「砂糖と珈琲豆と、後それから米ね。10kgのやつ。」
「えっ待って今まさに乾杯しようとしたのに………って米!?
しかも10kgとか、山子に対する嫌がらせ?嫌がらせなの?」

「うん、3割くらい。」
「3わ………。」

姫キララにおつかいを頼まれ、がっくりとうな垂れる山子。
………そう。優勝して商品をゲットするまでは、タダ働きは続行なのだ。

「あ、ちょい待ち。まだあるから。」
「まだあんの!?」
「うん。醤油とみりんと、ついでにソース買ってきて。あ、中濃でね。」
「いやそれどう考えても山子一人で持てないよね!?」

姫の鬼!鬼いぃぃぃと叫ぶ山子。
そんな山子を見かねたのか、二ィルとグライヴが助け舟を出す。

「あーはいはい。一緒に行ってやるよ、ねぇちゃん。」
「ぅんっ。皆でぃけば、早くぉわるょ!」
「に、二ィルちゃん………!」
「………うん。分かってたけど俺は無視なのな。」

二ィルの優しい言葉に感動し、瞳をうるうるさせる山子。
………毎度のことではあるが、グラ君が報われないのはいかがなものか。

×××××

そんなこんなでとりあえず、買い物に出かけた3人。
街はシャラノワール杯で活気に溢れ、まるでお祭りのように賑わっている。

「シャラノワール杯、かぁ………。」
「ん?」

買ったばかりの珈琲豆と砂糖を手に持ちつつ、二ィルがそう呟く。
そしてそれを聞いたグライヴは、訝しげに問うた。

「シャラノワール杯がどうかしたのか?」
「ぁ、ぇっとね。“シャラノワールの森”のぉ話、知ってる?」
「ああ、知ってるけど。………ねぇちゃんは?」
「えーと、女神様と少年だか青年の物語だっけ?」
「ぅん、そぅだよ。シャラノワールと、リュグのぉ話。
元々はコンヌースの一部の地域で伝わってた御伽噺でね………。
ボクもね、その辺りが出身の幼馴染に教ぇてもらったなーって思ぃ出して。」

「あー、アレってあっちの方の話なんだ。初めて知った。」
「ぅん。」

懐かしそうに、楽しげに話す二ィル。
そうしてしばらくすると、昔を思い出したのか………ぽつりと、呟いた。

「元気にしてるかなー………。」
「………誰が?」
「ラド。今頃何してるのかなぁー………って………?」
「ん?」
「へ?」

………今、何か声が多かった。
ハッとして3人が振り向くと、そこにはエルフの少年がいた。

グライヴはその顔に、見覚えがあった。
数日前、ユニコーン像の前でシャラノワールの森の話をしていたエルフ。
それが今、目の前に居る人物だ。

「………ったく、やっと見つけたぞにぃる。」
「ら、らど………?ホンモノ………?」
「俺に偽者がいてどーすんだよ。何の意味もねーだろうが。
………そんなことより。俺がここにいる意味、分かってんだろうな。」

「ぁっ………!」

どうやら、二ィルと少年―――ラドは、旧知の知り合いらしい。
が、どうも穏やかな間柄ではなさそうだ。
2人は話についていけないが、そのことだけはわかった。

「一緒に帰るぞ、二ィル。皆待ってんだから。」
「ゃ………ゃだっ!ボク、みぃちゃんと一緒じゃなきゃ帰らなぃ!」
「んなわがまま言うな!お前がいなきゃ、フィリアはどうなんだよ!
大体、みぃちゃんは自分で出てったんだ!帰ってくるはずないだろ!」

「説得するもん!説得して一緒に帰るんだもん!」

ぎゃんぎゃんぎゃんぎゃん。
………見た感じ子どもの喧嘩、である。だが、本人達は至って真面目である。
と、その時―――

「いいから来い!縛ってでも連れて帰るからな!」
「ゃっ………!」

ぐい、と。ラドが二ィルの腕を引っ張る。
それが痛かったのか、小さいながらも悲鳴を上げる二ィル。
すると次の瞬間。

「わたしのにるちゃんに何をしでかすかこのボケが―――!!」
「ぐほぁっ!?」

▼山子は 米10kgを ぶん投げた!

「おお、クリティカル。つか、ダメ3桁とかすげーなねぇちゃん。」

そしてその様子を見て、冷静に分析するグライヴ。
………人間に投擲スキルがあったなら、かなりの大ダメージだっただろうに。

「にぃるちゃんを掻っ攫おうなんて一万年と二千年早いわ!!
どうしても攫いたいというのであれば、山子の屍を超えて行け!!」

「ゃ、ゃまちゃかっこぃー………じゃなくて!
助けてくれたのは嬉しいけどっ、ラド、ラドー!?しっかりしてー!」


ゆさゆさと、米10kgをクリティカルで喰らって伸びたラドをゆする二ィル。
………寧ろトドメを刺しているような気がするのは何故だろうか。

「しっかりしてーっ!?」

ダンバの通りのど真ん中、二ィルの叫びが響き渡ったそうな。




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