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Act 14 「天使の系譜(尊き命。)」


証の剣を引き抜き、己が『世界を救う勇者』であることを知った山子。
そのことをより詳しく知る為、シドスネッターへ向かうことにしたが………。

「………みぃちゃん………。」
「………お、おーい………?」

廃鉱からバンホに戻り、出発の支度をし始めた山子。
が、一方の二ィルはと言えば、凄まじく落ち込んでいた。
………理由は言うまでも無く、先程のmishiaとのことである。

「ダメそうだな、澪姫様。ま、気持ちは分からなくもないが。」
「………あ。そういやさ、その“澪”って何ッスか綾徒くん。
話によく出てくるけど、ぶっちゃけ山子全然わかんないんだよね。
つーか寧ろ、山子主人公なのに話に置き去り………。」

「“主人公”じゃなくて“一応主人公”だからな、諦めろ。」
「ぐはっ。………で、教えてくれるの?」
「“澪”のこと、二ィルとmishiaについてのこと………。
全部まとめて教えてもいいけど、そうだな………50k頂きます。」

「………そうだった、綾徒くんて情報屋だった。」

がっくりとうなだれる山子。
そして、提示された金額にしばし逡巡した後、

「………せめて40kで。」
「じゃ、間を取って45k。」

と、ちょっとだけ割引してもらったのだった。
そして手持ちに45kがあったので、それをサクッと支払って。

「はい、確かに。じゃ、まずは“澪”から。
―――“澪”とは、“澪の御子”。エルフ族の、いわゆる“聖女”だ。」

「………マジで?」
「マジだ。澪姫とか天使とか別の呼び方もされるが、基本は“御子”。
んでもって、その御子はフィリアを、コンヌースを救う存在とされている。」

「………救う?」

はて、と首をかしげる山子。“救う”………一体、何から?と。

「ここ十数年、コンヌースの砂漠化、かなり深刻だろ?
とりわけフィリアは、村の中心にあった泉が枯れてきている………。」

「あー。そういや、そんなことになってたっけ。」
「そう。んで、そのフィリアを救う存在が澪の御子様。
―――伝説の“緑を紡ぐ詩”たる“メタファリカ”を謳う、聖女。」

「めたふぁりか………?」
「そう。“新緑の大地”………創造詩。

実は4千年位前の過去、コンヌースは雨の降らない不毛の土地だった。
当然、緑なんてあるわけもない。
だが、時の御子がその詩を謳い、あの地域一帯に緑をもたらした。
まぁ結局、時と共にまたあんな砂漠に戻っちまったわけだが………。
ま、その辺についてはあんまり関係ない話だからおいとくぞ。
んで、その御子が“澪”と呼ばれてたから、その後の御子も“澪”と呼ばれ始めた。
ついでに初代の澪は、天使の様に慈愛に満ちてたって話だ。
だから代々、澪の血脈は天使の系譜とすら呼ばれて………って。

………おーい。大丈夫か、山子。」

「いや全然。正直、イマイチ分かりません。」

………話についていけなかった山子であった。

「だろうな。そんな山子の為に、さくっと纏めてやろう。
二ィルは“澪の御子”と呼ばれる、天使の血を受け継ぐエルフ。
メタファリカと言う詩を謳ってフィリアに緑をもたらす聖女様。OK?」

「あ、それなら分かる。………ん?ちょっと待てよ?
ってことはにぃるちゃん、超重要人物じゃねーか。
それなのに、何でこんなとこに居るの。
せめてお付の人っつーか護衛の人とか、いるもんじゃねーの?」

「そこからはまた別口。mishiaとの関係性が問題なんだ。
………実はな、当初“澪の御子”として崇められていたのはmishiaなんだよ。」

「………へ?なんで?」
「先代の澪の御子………二ィルの母親だな。
その侍女だったエルフが、自分の娘と二ィルを取り替えたんだ。
………自分も天使の系譜。故に、娘も同じ天使の系譜である。
ならば娘―――mishiaは、しかるべき教育さえ受ければ澪になれる、と。」

「………マジか。」
「おう、マジだ。」

しばし沈黙。

「とは言え、それを知るのは取り替えた本人のみだった。
mishiaは立派な御子様として育ち、二ィルはただの村娘として育った。
………そして立場も関係なく、2人は親友になった。」

「………ど、泥沼の予感。」
「はい正解。まさしく、ドロ沼になったんだなコレが。
―――2年前、澪の御子が遂にメタファリカを謳う日が訪れた。」

「………それで、どうなったの?」
「どうもこうも、失敗したんだよ。
その辺は正直詳しく知らないが………“詩に拒絶された”そうだ。」


どういうことなんだか、と呟く綾徒。

「で、まぁ当然“なんで失敗したのか”って話になるわけだ。
そこで十数年前の澪姫取り替え事件が発覚、真実が白日の下に晒された。」

「………。」
「ま、そういうわけで二人の立場は文字通りひっくり返った。
二ィルは澪として崇められ、mishiaはただの村娘に成り下がった。
………勝手な話だよな。
今まで散々mishiaに期待してたエルフ達は、彼女に見向きもしなくなった。」

「………ああ、なるほど。なんか山子分かった。
それでみしあちゃんはフィリアを出てウルラに来て、魔帝国軍に所属したと。
んでにぃるちゃんはそれが納得できず、一人で追いかけてきたわけだ。」

「ビンゴ。ま、要するにそういうわけだ。
………親友を放っておけず、何もかもを放り出して追いかけてきた。
凄い自己中だが………俺は結構好きなんだよな、そういうの。」

にぃるちゃんはやらんぞ………?
「そういう意味の“好き”じゃない。話の流れで分かるだろ。」

シャーと、綾徒に牙を向ける山子。
………最早、山子のこういうところに関して言うことはあるまい。

「………で、当の本人には帰らないと拒絶されたわけか。
あー、そりゃにぃるちゃんも落ち込むワケだ。」

「全くだよな………ん?」
「ゃ………ゃまちゃ、綾徒くんっ!!」

と、そこへ。話題の中心んであった二ィルが、あわてて飛び込んできた。

「どした、にぃるちゃん。」
「そ、それが………ァレ!!」
「………アレ?」

びしっ、と二ィルが指差した先には―――1人の女性。それもかなりの美女だ。
そしてその周りには、人垣が出来ている。

「………誰、アレ。」
「………だぃまぉぅさま。」
「………はい?」

わんもあぷりーず、と山子が言う。
そして二ィルはすう、と息を吸い、もう一度言った。

「だからっ、大魔王のきゃを、だよ!!
魔帝国を興した女帝―――“絶世の美悪女”こと、“大魔王 きゃを”!!」

「………え、ちょっ、マジで―――!?




Next Story...Act 15 「大魔王、来たりて。」

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