AVANTIギルドブログです
ギルメンの皆さんジャンジャン活用して下さい☆
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
*****
Act 18 「只今大絶賛借金返済中」
「♪尽き満つれば 己が姿 仇なる業と共に闇の彼方へ―-」
「………うんうん。やっぱ酒場には華が必要だよねぇ。」
山子が酒場でタダ働きを開始して数日が経過した。
そんなある日、そういえばゃまちゃのツケってどのくらいあるの?と二ィルが訊ねた。
そうして姫キララが差し出したのは、厚さ約10cmにもなる伝票の山だった。
………これは、年単位で時間がかかる。
そう思った二ィルとグライヴは、山子を手伝うことにしたのであった。
幾ら急ぐ旅ではないとは言え、年単位で待つのは流石に勘弁して欲しい。
「………ってグラくん、なんか顔色悪いぞ?」
「え?あー、うん………。何かちょっと、頭痛くて………。」
そんなわけで、山子とグライヴが給仕や厨房で働き。
二ィルは酒場に作られてあったステージで謳い、借金返済に貢献している。
「あー、そういやもうずっと裏方作業任せっぱなしだっけ。
うん、いいよ。ちょっと休憩しておいで。おいらがやっとくから。」
「ん、ありがと姫。ちょっと外の空気吸ってくるわ。」
「………って、ちょい待ち!にぃちゃんばっかずるくねそれ!?
山子なんて開店前からずっと働いてるのに、休憩時間ナシなのに!!」
「山子にやる休憩時間なんてあると思うな^0^」
「くうっ………!!」
………ともあれ、山子の借金返済には、まだまだ時間がかかりそうである。
×××××
さて、こちらはところ変わって休憩中のグライヴ。
酒場を出て、息抜きがてら街をあちこち見て回っていた。
「………ん?」
ユニコーン像の前に来ると、何やら沢山の子どもが集まっていた。
その子どもたちの視線は、一人のエルフの少年に向けられていた。
「―――緑溢れる静かな楽園の、その奥深く。
そこには、優美な花を咲かせる神樹がありました。
植物の女神、シャラノワールが愛し守り育てたその花の名はダイアンサス。
いつしかその花は、『不死をもたらす花』と噂されるようになりました。」
―――それを聞いた欲深い人間達の手で、花は無残にも摘み取られてしまいました。
女神はその痛ましさに、激しく憤りました。
彼女の怒りに呼応して茨はうねり、不逞の輩を絡めとり、その鋭い棘で貫きました。
そうして森は『魔ノ森』と恐れられるようになりました―――
「………吟遊詩人?」
子どもたちに語りかけるように紡ぐのは、何処かの物語。
まるで吟遊詩人のようだと思ったが、少年はそのようには見えない。
旅人ではあるが、それ以前に戦士のようにすら感じる。
はて、と疑問に思うグライヴをよそに、少年は物語を語り続ける。
「―――そんなある日のこと。
また一人の若者が、この哀しみの森に入り込んできました。
シャラノワールは、いつものように荊で森を守ります。
が、澄んだ目をしたその若者は一向にひるむ気配がありません。
そうして青年、リュグは苦難の末に女神の元へ辿り着きました。
奇跡の森で、運命の森で導かれるように二人はめぐり合いました。
二人は戸惑いながらも心を求め合い、絆を育んでゆきました。
互いを、分かち阻むものは何も無いかのように思われました。」
―――けれどある日。
噂の森を厭った人々に火を放たれ、森が跡形もなく焼け落ちてしまいました。
女神の嘆きは深く、リュグのどんな慰めの言葉もその心には届きませんでした。
しかしやがて時が経つと、女神の周りには一面綺麗な花が咲き乱れるようになります。
けれどシャラノワールは嘆いて、その場を決して動こうとはしません―――
「二人の想いがすれ違い続けた、ある日のこと。
リュグは少し遠くに出かけるからしばらく帰らないと言い、出て行きました。
シャラは何も言わず、いつもどおりその場を動きませんでした。
それから三日が経ち、五日が経ち………。
リュグが帰ってこないことに、だんだんと不安になってきました。
そうして、あっという間に1ヶ月が経ってしまいました。
シャラはもう流石に居ても立ってもいられなくなり、その場を動いて探し始めました。
けれど、森中を歩いてリュグを探しましたが、見つかりませんでした。
三十二日目の夜、ついにシャラは泣き出してしまいました。
リュグが居ないことが、こんなに寂しくて不安で辛い事だとは思わなかったのです。
そしてあまりの悲しさに荊の森を作り、その中に閉じこもってしまいました。
―――茨の海の奥、深い森の奥で独り、女神は青年を待ち続けています。
もう一度出逢えれば頑なな心は解け、森は喜びを取り戻せるでしょう。」
そこまで少年は話すと、すぅっと息を吸って。
「愛する女神シャラノワールの元へ、もうすぐ青年は帰り着くでしょう。
傷だらけの体に希望を満たして、小さな神樹の苗を手に………。
深く生い茂った森の奥で、ひとつの物語が終わりを告げます。」
―――どうやらこれで、物語は終わりらしい。
この後、女神と青年がどうなったのか………まぁ、皆の想像にお任せするとしよう。
「………ん?シャラノワールって確か………。」
と、その物語を聞き終わり、ハッと気づいたグライヴ。
そう、さきほどの“シャラノワール”というのは、確か。
「そうだ、武道大会の名称。“シャラノワール杯”だっけ。」
近々ダンバで行なわれる武道大会の名称だった。
そして優勝商品として贈呈されるのが“ダイサンサスの花”。
物語に出てきたように不死をもたらすことはないが、特殊な効果があるのは確かな花。
「………あ。もしかして、これって………。」
そこまで思い出して、グライヴはあることに思い至った。
そう、もしかして。
「………よし。戻って姫に聞いてみよう。」
Next Story...Act 19 「武道大会(覇道を進め!)」
×××××
今回、本文中に用いた曲
「EXEC_PAJA/.#Misya extracting」
(えぐぜぐ・ぱーじゃ みしゃ えくすとらくてぃんぐ)
出典:アルトネリコ、歌手:志方 あきこ
「シャラノワールの森」
出典:謳う丘~Ar=Ciel Ar=Dor~、歌手:志方あきこ
PR
*****
Act 17 「謳う丘(と再会の姫)」
「シドスネッターに向かう一行は途中、ダンバートンに立ち寄った。
しかしそこには既に、行く手を阻む敵が待ち構えていたのだった。
行く手を遮られた勇者一行は、仕方なくダンバに滞在し………。」
「………何、ァレ。」
「現実逃避の為の捏造ナレーション。」
さて、バンホを出発した一行は、ダンバに辿り着いていた。
ダンバでは近々、武道大会が開かれるらしく、街中が活気付いていた。
………が、そんな中。
我等が一応勇者こと山子は、非常に暗い影を落としていた。
「あーもー、なんで山子がこんなことー!!」
「「自業自得。」」
「うっ………。声を揃えて言わなくても………!!」
―――山子は今、いわゆる“タダ働き”の真っ最中なのであった。
×××××
さて、話は少しばかり時を遡る。
バンホを出て、ダンバまではあと少しの距離にある、小高い丘の上。
そこで3人は、ちょっとした休憩をとっていた。
「♪天上を翔舞う 霊囁き結えば 冠火降り満ちて 何人幸織り成せ――」
「ああ癒されるー………。にぃるちゃんは天使だ………。」
「まぁ実際、天使の系譜って呼ばれてるしなー。」
そこで二ィルが謳い、2人はそれに聞きふける。
そうして穏やかに時は流れ、詩が終わればちょっとした談笑へと切り替える。
―――そんな時、彼女は現れた。
「………お、見っけ。」
「ほぇ?」
「ん?」
「げっ!?」
ひょっこりと現れたのは、エルフの女性。かなりの美人だ。
そうして二ィルに、先ほど謳っていたのは君?と聞いた。頷く二ィル。
「そっかー。どこからか聞こえてくるから、誰だろーと思ってて。」
「ああ、そういやこの辺り何もねぇから、詩とか響くよな。」
「そうそう。………で、」
くるり、と。
女性は、二ィルとグライヴに向けていた体を半回転させて、
「何処行く気だ、山子。」
「ば、バンホに忘れ物したから戻ろうかと………。」
「や ま こ ?」
「………ゆ、許して姫ー!お願いだからもうちょっと待ってー!!」
じたばたと暴れる山子の服の襟首を掴んで離さない女性。
………はて、と。その様子を見ていた二ィルは、首を傾げた後に口を開いた。
「………知り合ぃ?」
「ん?あ、ごめん。そういや自己紹介してなかったっけ。
おいら、姫キララ。ダンバでまぁ、そこそこ流行ってる酒場のママやってます^0^」
そうして、挨拶を交わす2人。
その様子を見ていたグライヴは、はぁと一つ溜息をついた後に姫に声をかけた。
「や、姫。何か俺としては久々に会う気がするんだけど。」
「お、グラくん。元気してた?魔王様にこき使われてない?」
「いや、頼むからそれは聞かないで欲しいんだけど………。」
どうやら、グライヴの方も姫キララとは知り合いだったらしい。
「………で、何?ねぇちゃん、またツケ踏み倒してんの?」
「そうそう。んでこの前、フクロウで請求書送ったんだけどさ。
振り込み期限とっくに過ぎたんだけど、入金が全くされてないんだけどー?」
「いやうん今お金なくて!!」
「へー、ほー、へー………。うん、山子の言い分はよく分かった。
で、山子。おいらさ、言ったよね?
次に請求書送った時にツケ払えなかったら、全額返済するまで店でタダ働きって。」
「………そ、そんなこと言イマシタッケー?」
にっこり。………男女問わず見惚れそうな笑顔を浮かべる姫キララ。
そしてその笑顔を保ったまま、懐から一枚の紙を取り出した。
「コ・レ。書いたよね?」
「………ぇーと、『誓約書』って書いてあるね………。
しかも、ゃまちゃのサインと拇印もバッチリ。」
「………文書の内容も簡潔だけど筋通ってるな。」
「の、ノリで書いただけなのに………!?」
皆様は書類にサインする時、内容をきっちり読みましょう。
また、安易な気持ちでサインをするのもやめましょう。
「と言うわけで、おいらの店でタダ働きな。」
「の、のおおぉぉぉぉ………!!」
「「いってらっしゃーい。」」
「えちょ、2人共そこで普通に見送っちゃうの!?
このままだと旅続行できないんだよ!?それでもいいの!?」
「急ぐ旅じゃないしなー。」
「ぃかどぅぶんー。」
「2人の鬼ーっ!!」
………かくして、山子は姫キララにドナドナよろしく連れて行かれ。
姫の酒場で、ツケの全額返済の為に働き始めるのであった。
ちなみに文字通り自業自得で同情の余地はないので、哀れむ必要性は全くない。
Next Story...Act 18 「只今大絶賛借金返済中」
×××××
今回、本文中に用いた曲
「謳う丘~Harmonics EOLIA~」(うたうおか ハーモニクス・エオリア)
出典:アルトネリコ、歌手:志方 あきこ
*****
Act ?? 「一つの幸福の残骸」
それは本人達しか知り得ない、一つの物語の欠片―――
「Faura yerwe murfan anw sol ciel.
(小鳥は啼く 世界を想い)
Faura sonwe murfan anw sol ciel ee.
(小鳥は謳う 人々を想い)
Ridalnae sol ciel yanyaue manaf.
(掛け替えの無い世界 貴き生命達)
presia yasra lusye enclone anw omnis.
(慈しみの光 溢れる日を願い―――)
―――………どうした、***。」
「………私の知らない詩だわ、と思って。
いえ………寧ろ、貴方が謳うところなんて、初めて見たわ。中々、上手なのね。」
緑溢るる、何処かの草原の只中。
銀の長い髪の少年と、金色の髪の少女が居た。
「………今のは、俺が初めて創った詩だ。」
「あら、そうなの?」
「ああ。だが、何が悪かったのか………何の効果もでない詩だ。
ただ、戒めとしては丁度良いんでな。今後の為にも、こうして時々思い出す。」
「そうなのね。だけど私はその詩、結構好きだわ。
世界に対する、貴方の愛が満ち溢れているもの。………素敵よ。」
「………そう言ってもらえるなら、この詩にも意味はあるんだろうな。」
少年と少女は大地に座して、言葉を交し合う。
そうしてそれが途切れたかと思えば、どちらともなく詩を謳う。
今、詩を謳うのは―――少年の方だ。
「………ねぇ。さっきの詩、私に教えなさい。」
「教えるのは構わないが、何の役にも立たないぞ。」
「承知してるわ。でも、良いでしょう?
その詩、気に入ったのだもの。………そういえば、タイトルを聞いてないわね。」
「分かった、教える。―――この詩は、ハーモニウス。
『EXEC_HARMONIUS/.』―――冀望(きぼう)の詩だ。」
そうして再び、緑の世界に詩が響く。
「Van fandel viega heighte mea,
(喩え 数多の刃にうたれる時も)
van fandel wis lurrea,
(数多の恐怖に慄く時も)
van fandel cryudea ousye,
(数多の苦難に喘ぐ時も)
van fandel deleir ousye,
(数多の禍に追われる時も)
van fandel gauzewiga der lamenza,
(数多の嘆きが絶望へと歪む時も)」
「was ki ra tasyue eterne sarla yor.
(決して途絶えぬ詩を 御身へと捧げん)
Alroetsue kierre iem,
(今が贖罪の刻)
fandel zadius,hierle melifan,iem endia.
(憎悪の連鎖 嘆きの歴史を 今断たん)」
―――それは本人達しか知り得ない、一つの物語の欠片。
もう手にすることの叶わない、………一つの幸福の、残骸にも似た。
Next Story...Act 17 「謳う丘(と再会の姫)」
×××××
今回、本文中に用いた曲
「EXEC_HARMONIUS/.」(エグゼグ・ハーモニウス)
出典:アルトネリコ、歌手:志方 あきこ
EXEC_HARMONIUS/.を聴いてみる(You Tube リンク)
*****
Act 16.5 「Interlude 2」
山子たち3人が、バンホを出発してしばらく。
今、3人はダンバとバンホをつなぐ街道を歩いていた。
―――そしてその街道を見渡せる、小高い丘の上。
「………いいのか?アイツ、アンタ等の計画に必要なんだろ?」
「そりゃあ勿論。」
「じゃあ、何でわざわざ解放するような真似を?
………いや。なんでわざと、勇者達と一緒に居させるように仕向けた?」
そこで、二人の男女が対峙していた。―――だが、空気はあまり良いとは言えない。
「そうだなぁ………言うなれば、荒療治かな。」
「荒療治?」
「そ。だって、いつまでも自分の役目を自覚してくれないんだもの。
―――いい加減、自覚させないとね。自分が“生贄”だってことを。」
「………左様で。まぁ、そちらさんがいいならそれでいいさ。
ああ、ところでさ。この前もらったあの剣なんだけど。」
「ああ、偽・螺旋剣?」
「そう。正直、微妙だった。他のヤツにしてくれないか?」
―――それとも、四千年前の神秘の武具ってのは微妙なモンばっかりなのか?
「まさか。伝説の鍛冶師と謳われる男の造った武器だよ?
まぁ、中には微妙なものもいくつかあるけど………。
だけど、今の時代にああいうものを造れる人がいると思うか?」
「ま、いないわな。偽・螺旋剣にしたって、あの威力は半端ない。」
くすり、と女性が笑う。そうして、眼下で道を歩む3人を見つめて、
「………さてと。それじゃ、自分はマハに帰るとするわ。」
「え?あいつ等の動向、見てなくて良いのか?」
「残念ながら、まだちょっと準備が足りないんでね。
それに、あの3人はダンバで必ず足止めを食らう。
しばらく目を離しておいても、問題ない。………それに。」
「それに?」
「―――監視役なら、自分以上に適任がいるからね。」
―――そうして。
丘の上から女性は去り、男が一人取り残される。
「………ダンバには、とっくに間者が入り込んでたわけか。
ま、それもそうだよな………。さて、オレもダンバに向かうとするか。
―――そういや、そろそろ武道大会が開かれるんだったっけ。」
そうして、残された男も去って行く。
―――ザアァ、と。
音を立てて、丘の上を風が流れていく。
Next Story...Act ?? 「一つの幸福の残骸」
※わたくしごとですが、作者が本日誕生日です。
一言声かけてあげると、調子にのって続き書きます(←
*****
Act 16 「賢者再び(あ、にぃちゃん。)」
突然ですが、本日の天気をお送りします。
本日はウルラ全域、晴天となるでしょう。但し、一部地域では吹雪く可能性があります。
バンホール方面にお出かけになる際は、凍らないように注意が必要です。
繰り返しお伝えします。本日はウルラ全域………。
「………。」
「………。」
「………。」
………と、まぁそんなわけで。
バンホールの中心部では今まさに、ブリザードが吹き荒れていた。
「あー………うん。元気だった?にぃちゃん。」
「………おかげさまで。魔王様に散っ々扱き使われてますよ。」
「は、はゎゎ………!」
そしてそのブリザードが、いつ劫火に変わってもおかしくない状況だ。
………山子のしてきた悪さが、この状況を形作っているわけだが。
「えーっと………なんでにぃちゃん、こんなとこにいんの?
今日も明日もこーちゃんに扱き使われると思ってたのに。」
「みぃちゃん迎えに行って来いって放り出されたんだよ。
………まぁ、もう出て行った後みたいだけどさ。」
つーか、大魔王様まで来てたってどーいうことだよ………。
ボソリとつぶやくグライブ。まぁ、それが当然の反応であろう。
「あ、じゃあ山子達行くね!にぃちゃん、お達者で~。」
「ぇ、ゃまちゃ?」
「………へー?俺にやったこと、全部なかったことにする気か………?」
「ぎくり。」
どうやら山子、自分がしたことの外道っぷりについて自覚はあるらしい。
なので、静かに怒っているグライヴをスルーしようとしたが………失敗した。
「………。」
「………。」
「………。」
そして再び、ブリザードの中で立ちすくむ3人。
………とりあえず、間に挟まれた二ィルに罪はない。
「………あ。ねぇちゃん、それ………?」
「へ?コレ?」
だがその途中、ふと何かに気づいたグライヴ。
その視線が注がれるのは、山子が所持する二振りの剣。
「あー、なんかよくわかんないけど、証の剣とかなんとか。」
「………碧の賢帝と、紅の暴君だろ。」
「え、知ってんの?」
「知ってるの何も、俺は………。いや、やめとこう。
つーか、マジでねぇちゃんが勇者だったのかよ。別のヤツだと信じたかったのに………。」
「ぐ、グラくん?」
ぶつぶつと何事かを呟き始めるグライヴ。
どうやら、山子や二ィルが目の前に居るのを忘れているようだ。
………傍から見ると、怪しい人である。
「………おーい、怪しい人になってるぞー。」
「あ、悪い………って、ねぇちゃんにだけは言われたくないんだけど。」
全くである。まぁ、山子の場合は“怪しい人”ではなく“変態”だが。
「………正直、ねぇちゃん相手とかすっげぇ嫌だけど………。
でも、俺にだって一族の誇りっつーかまぁ、矜持はあるわけだし………。」
「?」
「………そうだよな。戦わない限り、世界は月の刻のままだ。
よし………。ねぇちゃん、悪いんだけどさ………。」
「ん?」
そうしてグライヴは、覚悟を決めて口を開いた。
「俺と一緒に、ウルラの最果てに来て欲しい。」
「………へ?」
―――ウルラの最果て、即ちシドスネッター。
そこは奇しくも、山子たちが目指そうとしていた土地その場所だった。
「一緒にも何も、山子たち其処行くつもりだったんだけど。」
「え。………なんでって、聞いてもいいか?」
「や、この剣を引っこ抜いて、勇者とはなんぞやーて聞いたのね。
そしたら、シドスネッター行けば詳しく分かるからって言われたもんで。」
「………聞いたって、誰に?」
「綾徒っつー謎の情報屋のにーちゃん。」
「げ。あの人か………。」
山子が綾徒の名を告げた瞬間、納得がいったと言わんばかりの表情を浮かべたグライヴ。
………まぁ、深くは語るまい。
「てゆーかさ。一緒に行くのはこの際構わないんだけどさ。」
「あ?なんだよ?」
「こーちゃんのとこ、帰らなくていいの?
って言うか寧ろ、帰らないとにぃちゃんの今後の進退が非常に危険な気がするヨ?」
「ああ………それなら実は大丈夫だったりするんだな、コレが。」
「へ?ナンデ?」
×××××
過去回想。イメンマハ、魔王城での一コマ。
「グラくん、ちょっと仕事お願いしたいんだけど。」
「えちょ、発電とか倉庫整理とかあるのにまた追加っスか!?」
「いいよ、それは全部やらなくて。他の人に任せられるし。
その代わり、ちょっとバンホまで行って、みぃちゃん迎えに行ってきて。」
「え、みぃちゃん?」
「そ。ああ、もし入れ違いだったらそれはそれで仕方ないから良いよ。
んで、もしいなかったらそのまましばらく帰って来なくていいから。」
「………え?マジで?」
「大マジ。ちょっと事情が変わってね、居られると寧ろ邪魔。
だから仮にみぃちゃんが居ても、送り届けたらすぐ出かけて良いよ。」
「………その言葉、一語一句訂正はないですよね?」
「ない。と言うわけで、行って来い!」
「おう!!」
回想終了。
×××××
「………と、こんな感じ。」
「ほうほう。つまり、にぃちゃんはこーちゃんに捨てられたと。」
「それだったらどんなに良かったことか………。」
「ぐ、グラ君しっかりっ!?」
ははは、と遠い目をするグライヴ。………哀れだ。哀れ過ぎる。
「………まぁ、そういうわけだから俺は只今休暇中。
つーわけで、俺が何処に行ってもお咎めは全くない。」
「良かったな、にぃちゃん。」
「………休み明けのことを考えると、今から憂鬱だけどな。」
………とりあえず、つい先ほどまで吹雪いていたブリザードはどこへやら。
ほのぼのと談笑する3人。そして、ある程度話を終えたところで。
「よっし………。んじゃ、出発するとしますか!
―――目指すはウルラの最果て、シドスネッター!」
―――シドスネッターへ向けて、3人は旅立った。
Next Story...Act 16.5 「Interlude 2」
×××××
*嘘か本当か明言出来ない次章予告 Part2*
シドスネッターを目指す一行は途中、ダンバに立ち寄った。
そこで知った武道大会開催の知らせ。とある事情で、それに参加することとなり
「優勝しないと、山子の人生がっ………!!」
「………自業自得だけどな。」
「ぅん、そぅだね………。」
どうやら、また山子が何かをやらかしたらしい。
そうして始まった大会の最中、二ィルは過去と再会する―――
「ど、どぅしてラドがここに………?」
「………どうしても何も、オレの仕事は知ってるだろ?」
順調に勝ち上がっていく山子たち。
そして遂に訪れた、決勝の舞台。そこで対峙するのは―――
「手加減しねぇぞ、ねぇちゃん!」
「望むところだ、にぃちゃん!!」
―――栄光の杯は、果たしてどちらが手にするのか―――
次章、「激突!ダンバートン!」
山子の人生を賭けたこの戦い、生半可では勝ち抜けねぇぜ!!
「………っていうか、山子の人生ドウナルノ?」
それは読んでのお楽しみ。
一言声かけてあげると、調子にのって続き書きます(←
*****
Act 16 「賢者再び(あ、にぃちゃん。)」
突然ですが、本日の天気をお送りします。
本日はウルラ全域、晴天となるでしょう。但し、一部地域では吹雪く可能性があります。
バンホール方面にお出かけになる際は、凍らないように注意が必要です。
繰り返しお伝えします。本日はウルラ全域………。
「………。」
「………。」
「………。」
………と、まぁそんなわけで。
バンホールの中心部では今まさに、ブリザードが吹き荒れていた。
「あー………うん。元気だった?にぃちゃん。」
「………おかげさまで。魔王様に散っ々扱き使われてますよ。」
「は、はゎゎ………!」
そしてそのブリザードが、いつ劫火に変わってもおかしくない状況だ。
………山子のしてきた悪さが、この状況を形作っているわけだが。
「えーっと………なんでにぃちゃん、こんなとこにいんの?
今日も明日もこーちゃんに扱き使われると思ってたのに。」
「みぃちゃん迎えに行って来いって放り出されたんだよ。
………まぁ、もう出て行った後みたいだけどさ。」
つーか、大魔王様まで来てたってどーいうことだよ………。
ボソリとつぶやくグライブ。まぁ、それが当然の反応であろう。
「あ、じゃあ山子達行くね!にぃちゃん、お達者で~。」
「ぇ、ゃまちゃ?」
「………へー?俺にやったこと、全部なかったことにする気か………?」
「ぎくり。」
どうやら山子、自分がしたことの外道っぷりについて自覚はあるらしい。
なので、静かに怒っているグライヴをスルーしようとしたが………失敗した。
「………。」
「………。」
「………。」
そして再び、ブリザードの中で立ちすくむ3人。
………とりあえず、間に挟まれた二ィルに罪はない。
「………あ。ねぇちゃん、それ………?」
「へ?コレ?」
だがその途中、ふと何かに気づいたグライヴ。
その視線が注がれるのは、山子が所持する二振りの剣。
「あー、なんかよくわかんないけど、証の剣とかなんとか。」
「………碧の賢帝と、紅の暴君だろ。」
「え、知ってんの?」
「知ってるの何も、俺は………。いや、やめとこう。
つーか、マジでねぇちゃんが勇者だったのかよ。別のヤツだと信じたかったのに………。」
「ぐ、グラくん?」
ぶつぶつと何事かを呟き始めるグライヴ。
どうやら、山子や二ィルが目の前に居るのを忘れているようだ。
………傍から見ると、怪しい人である。
「………おーい、怪しい人になってるぞー。」
「あ、悪い………って、ねぇちゃんにだけは言われたくないんだけど。」
全くである。まぁ、山子の場合は“怪しい人”ではなく“変態”だが。
「………正直、ねぇちゃん相手とかすっげぇ嫌だけど………。
でも、俺にだって一族の誇りっつーかまぁ、矜持はあるわけだし………。」
「?」
「………そうだよな。戦わない限り、世界は月の刻のままだ。
よし………。ねぇちゃん、悪いんだけどさ………。」
「ん?」
そうしてグライヴは、覚悟を決めて口を開いた。
「俺と一緒に、ウルラの最果てに来て欲しい。」
「………へ?」
―――ウルラの最果て、即ちシドスネッター。
そこは奇しくも、山子たちが目指そうとしていた土地その場所だった。
「一緒にも何も、山子たち其処行くつもりだったんだけど。」
「え。………なんでって、聞いてもいいか?」
「や、この剣を引っこ抜いて、勇者とはなんぞやーて聞いたのね。
そしたら、シドスネッター行けば詳しく分かるからって言われたもんで。」
「………聞いたって、誰に?」
「綾徒っつー謎の情報屋のにーちゃん。」
「げ。あの人か………。」
山子が綾徒の名を告げた瞬間、納得がいったと言わんばかりの表情を浮かべたグライヴ。
………まぁ、深くは語るまい。
「てゆーかさ。一緒に行くのはこの際構わないんだけどさ。」
「あ?なんだよ?」
「こーちゃんのとこ、帰らなくていいの?
って言うか寧ろ、帰らないとにぃちゃんの今後の進退が非常に危険な気がするヨ?」
「ああ………それなら実は大丈夫だったりするんだな、コレが。」
「へ?ナンデ?」
×××××
過去回想。イメンマハ、魔王城での一コマ。
「グラくん、ちょっと仕事お願いしたいんだけど。」
「えちょ、発電とか倉庫整理とかあるのにまた追加っスか!?」
「いいよ、それは全部やらなくて。他の人に任せられるし。
その代わり、ちょっとバンホまで行って、みぃちゃん迎えに行ってきて。」
「え、みぃちゃん?」
「そ。ああ、もし入れ違いだったらそれはそれで仕方ないから良いよ。
んで、もしいなかったらそのまましばらく帰って来なくていいから。」
「………え?マジで?」
「大マジ。ちょっと事情が変わってね、居られると寧ろ邪魔。
だから仮にみぃちゃんが居ても、送り届けたらすぐ出かけて良いよ。」
「………その言葉、一語一句訂正はないですよね?」
「ない。と言うわけで、行って来い!」
「おう!!」
回想終了。
×××××
「………と、こんな感じ。」
「ほうほう。つまり、にぃちゃんはこーちゃんに捨てられたと。」
「それだったらどんなに良かったことか………。」
「ぐ、グラ君しっかりっ!?」
ははは、と遠い目をするグライヴ。………哀れだ。哀れ過ぎる。
「………まぁ、そういうわけだから俺は只今休暇中。
つーわけで、俺が何処に行ってもお咎めは全くない。」
「良かったな、にぃちゃん。」
「………休み明けのことを考えると、今から憂鬱だけどな。」
………とりあえず、つい先ほどまで吹雪いていたブリザードはどこへやら。
ほのぼのと談笑する3人。そして、ある程度話を終えたところで。
「よっし………。んじゃ、出発するとしますか!
―――目指すはウルラの最果て、シドスネッター!」
―――シドスネッターへ向けて、3人は旅立った。
Next Story...Act 16.5 「Interlude 2」
×××××
*嘘か本当か明言出来ない次章予告 Part2*
シドスネッターを目指す一行は途中、ダンバに立ち寄った。
そこで知った武道大会開催の知らせ。とある事情で、それに参加することとなり
「優勝しないと、山子の人生がっ………!!」
「………自業自得だけどな。」
「ぅん、そぅだね………。」
どうやら、また山子が何かをやらかしたらしい。
そうして始まった大会の最中、二ィルは過去と再会する―――
「ど、どぅしてラドがここに………?」
「………どうしても何も、オレの仕事は知ってるだろ?」
順調に勝ち上がっていく山子たち。
そして遂に訪れた、決勝の舞台。そこで対峙するのは―――
「手加減しねぇぞ、ねぇちゃん!」
「望むところだ、にぃちゃん!!」
―――栄光の杯は、果たしてどちらが手にするのか―――
次章、「激突!ダンバートン!」
山子の人生を賭けたこの戦い、生半可では勝ち抜けねぇぜ!!
「………っていうか、山子の人生ドウナルノ?」
それは読んでのお楽しみ。