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Act 1 「獣道とエルフの少女。」
「話は、聞いてたけどっ、まさかココまで酷いとは………!」
オスナサイル。ダンバートンとイメンマハを繋ぐ道である。
切り立った崖とそり立つ崖に挟まれた、非常に足場が不安定で危険な道だ。
道幅は、馬が一頭通れるか通れないか、と言った狭さ。
勿論、ところどころに広い空間はあるのだが。
………昔はもう少し広かったのだが、戦のせいで随分と狭くなってしまった。
それに、今となってはこの道を通る人間は皆無に等しい。
此処はかつて激戦地だった為か、どうもよくない噂ばかりがあるのだ。
そして上述の通り道が悪いせいもあり、人は通らない。
………まぁ、ダンバからマハに行く人はいないと言うのが最も正しいだろう。
何せダンバはエイリフ王国側の都市だが、マハは魔帝国側の都市だ。
交流は途絶えているし、情報も滅多に入ってこないぐらいだ。
ちなみに、昔とは違って今のご時勢、旅人はほとんどいない。
下手に旅でもしてみれば、互いの国のスパイとすら取られかねないのだ。
故に、数少ない旅人や冒険者は、かなりその手のことに長けていると言える。
………山子がそうなのかどうかは、さておくが。
「………お、やっと広いとこでた!!あー、つっかれたー。」
ようやく足場の安定した広いところに出た山子。
落ち着きながら、目的地までの距離を再確認しようとした………その時。
「ひゃああぁぁぁ!?」
「む、女の子の声!助けにいかねば!」
そう遠くはないであろう場所から、悲鳴が聞こえた。
声の主は、そう年端もいかぬであろう少女のものだ。
………よく一発で分かるな山子、とか突っ込んではいけない。
「羊狼め、覚悟ー!」
「ぇ、え?」
悲鳴の主の許に辿り着き、その前に立ち塞がる羊狼をばっさばっさと蹴散らす山子。
声の主は、やはり少女だった。それもエルフの、だ。
………そしてその少女は後に言う。「ゃまちゃの目、怖かった」と。
「………ふぅ!大丈夫、お嬢さん!!」
「え、えっと………。あ、ありがとぅ………。」
何が何だか事情が飲み込めてない少女。
だが、自分が目の前の山子に助けられたことだけはハッキリしている。
なのでお礼を言い、山子の差し出した手を掴んで立ち上がる。
「危ないよ、可愛い子がこんなとこにいちゃ!!」
「え!?か、可愛いって僕がっ!?」
「それ以外に誰が居る!」
突然“可愛い”と称された事に動揺する少女。
が、山子は全く関係ないとばかりに褒めまくる。………微妙な絵図だ。
「危ないから、ダンバ………あ、寧ろマハか?
まぁ兎に角、自分の家に帰った方がいいよ!この辺、道も危ないし!」
「ぇっと………心配してくれて、ぁりがとう。
でも僕、マハに行かないといけないの。だから、帰らない。」
「むむっ………。」
山子の優しい忠告空しく、目の前のエルフの少女はそう言い切った。
………が、タダで転んで起きるような山子ではない。
「じゃあ、わたしと一緒に行こう!私もマハ行く途中だから!」
「ぇ、一緒に………?」
「うんそうてか決まり!よーし、マハへれっつごー!」
「ぇ、ふえええ!?」
………後に出会う青年にこの出会いを語ったところ、少女はこう言われた。
“それは明らかに人攫いだ。誘拐だ。”と。
だがそれは未来の話であって、今の少女には全く関係ないわけで―――
「あ、わたし山子って言うんだけど、君の名前教えて?」
「ぇ?あ、二ィル!僕、二ィルだよ!」
「二ィル………よし、にぃるちゃんね!じゃ、行こう!」
「ぅん!!」
―――こうして、山子と二ィルは出会った………が。
「ああもう、にぃるちゃん可愛いー!」
「ふえ、ふええぇぇぇえぇ!?」
………にーるちゃん的には、会わなかった方が良かった………かも。
おーい山子ー、スキンシップも程度が過ぎればただの変質者だぞー。
「大丈夫、捕まる気ないから!!」
………いや、そういう問題じゃないと思うんだが。
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