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Act 17 「謳う丘(と再会の姫)」
「シドスネッターに向かう一行は途中、ダンバートンに立ち寄った。
しかしそこには既に、行く手を阻む敵が待ち構えていたのだった。
行く手を遮られた勇者一行は、仕方なくダンバに滞在し………。」
「………何、ァレ。」
「現実逃避の為の捏造ナレーション。」
さて、バンホを出発した一行は、ダンバに辿り着いていた。
ダンバでは近々、武道大会が開かれるらしく、街中が活気付いていた。
………が、そんな中。
我等が一応勇者こと山子は、非常に暗い影を落としていた。
「あーもー、なんで山子がこんなことー!!」
「「自業自得。」」
「うっ………。声を揃えて言わなくても………!!」
―――山子は今、いわゆる“タダ働き”の真っ最中なのであった。
×××××
さて、話は少しばかり時を遡る。
バンホを出て、ダンバまではあと少しの距離にある、小高い丘の上。
そこで3人は、ちょっとした休憩をとっていた。
「♪天上を翔舞う 霊囁き結えば 冠火降り満ちて 何人幸織り成せ――」
「ああ癒されるー………。にぃるちゃんは天使だ………。」
「まぁ実際、天使の系譜って呼ばれてるしなー。」
そこで二ィルが謳い、2人はそれに聞きふける。
そうして穏やかに時は流れ、詩が終わればちょっとした談笑へと切り替える。
―――そんな時、彼女は現れた。
「………お、見っけ。」
「ほぇ?」
「ん?」
「げっ!?」
ひょっこりと現れたのは、エルフの女性。かなりの美人だ。
そうして二ィルに、先ほど謳っていたのは君?と聞いた。頷く二ィル。
「そっかー。どこからか聞こえてくるから、誰だろーと思ってて。」
「ああ、そういやこの辺り何もねぇから、詩とか響くよな。」
「そうそう。………で、」
くるり、と。
女性は、二ィルとグライヴに向けていた体を半回転させて、
「何処行く気だ、山子。」
「ば、バンホに忘れ物したから戻ろうかと………。」
「や ま こ ?」
「………ゆ、許して姫ー!お願いだからもうちょっと待ってー!!」
じたばたと暴れる山子の服の襟首を掴んで離さない女性。
………はて、と。その様子を見ていた二ィルは、首を傾げた後に口を開いた。
「………知り合ぃ?」
「ん?あ、ごめん。そういや自己紹介してなかったっけ。
おいら、姫キララ。ダンバでまぁ、そこそこ流行ってる酒場のママやってます^0^」
そうして、挨拶を交わす2人。
その様子を見ていたグライヴは、はぁと一つ溜息をついた後に姫に声をかけた。
「や、姫。何か俺としては久々に会う気がするんだけど。」
「お、グラくん。元気してた?魔王様にこき使われてない?」
「いや、頼むからそれは聞かないで欲しいんだけど………。」
どうやら、グライヴの方も姫キララとは知り合いだったらしい。
「………で、何?ねぇちゃん、またツケ踏み倒してんの?」
「そうそう。んでこの前、フクロウで請求書送ったんだけどさ。
振り込み期限とっくに過ぎたんだけど、入金が全くされてないんだけどー?」
「いやうん今お金なくて!!」
「へー、ほー、へー………。うん、山子の言い分はよく分かった。
で、山子。おいらさ、言ったよね?
次に請求書送った時にツケ払えなかったら、全額返済するまで店でタダ働きって。」
「………そ、そんなこと言イマシタッケー?」
にっこり。………男女問わず見惚れそうな笑顔を浮かべる姫キララ。
そしてその笑顔を保ったまま、懐から一枚の紙を取り出した。
「コ・レ。書いたよね?」
「………ぇーと、『誓約書』って書いてあるね………。
しかも、ゃまちゃのサインと拇印もバッチリ。」
「………文書の内容も簡潔だけど筋通ってるな。」
「の、ノリで書いただけなのに………!?」
皆様は書類にサインする時、内容をきっちり読みましょう。
また、安易な気持ちでサインをするのもやめましょう。
「と言うわけで、おいらの店でタダ働きな。」
「の、のおおぉぉぉぉ………!!」
「「いってらっしゃーい。」」
「えちょ、2人共そこで普通に見送っちゃうの!?
このままだと旅続行できないんだよ!?それでもいいの!?」
「急ぐ旅じゃないしなー。」
「ぃかどぅぶんー。」
「2人の鬼ーっ!!」
………かくして、山子は姫キララにドナドナよろしく連れて行かれ。
姫の酒場で、ツケの全額返済の為に働き始めるのであった。
ちなみに文字通り自業自得で同情の余地はないので、哀れむ必要性は全くない。
Next Story...Act 18 「只今大絶賛借金返済中」
×××××
今回、本文中に用いた曲
「謳う丘~Harmonics EOLIA~」(うたうおか ハーモニクス・エオリア)
出典:アルトネリコ、歌手:志方 あきこ
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