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*****

Act 18 「只今大絶賛借金返済中」


「♪尽き満つれば 己が姿 仇なる業と共に闇の彼方へ―-」
「………うんうん。やっぱ酒場には華が必要だよねぇ。」

山子が酒場でタダ働きを開始して数日が経過した。
そんなある日、そういえばゃまちゃのツケってどのくらいあるの?と二ィルが訊ねた。
そうして姫キララが差し出したのは、厚さ約10cmにもなる伝票の山だった。

………これは、年単位で時間がかかる。

そう思った二ィルとグライヴは、山子を手伝うことにしたのであった。
幾ら急ぐ旅ではないとは言え、年単位で待つのは流石に勘弁して欲しい。

「………ってグラくん、なんか顔色悪いぞ?」
「え?あー、うん………。何かちょっと、頭痛くて………。」

そんなわけで、山子とグライヴが給仕や厨房で働き。
二ィルは酒場に作られてあったステージで謳い、借金返済に貢献している。

「あー、そういやもうずっと裏方作業任せっぱなしだっけ。
うん、いいよ。ちょっと休憩しておいで。おいらがやっとくから。」

「ん、ありがと姫。ちょっと外の空気吸ってくるわ。」
「………って、ちょい待ち!にぃちゃんばっかずるくねそれ!?
山子なんて開店前からずっと働いてるのに、休憩時間ナシなのに!!」

「山子にやる休憩時間なんてあると思うな^0^」
「くうっ………!!」

………ともあれ、山子の借金返済には、まだまだ時間がかかりそうである。

×××××

さて、こちらはところ変わって休憩中のグライヴ。
酒場を出て、息抜きがてら街をあちこち見て回っていた。

「………ん?」

ユニコーン像の前に来ると、何やら沢山の子どもが集まっていた。
その子どもたちの視線は、一人のエルフの少年に向けられていた。

「―――緑溢れる静かな楽園の、その奥深く。
そこには、優美な花を咲かせる神樹がありました。
植物の女神、シャラノワールが愛し守り育てたその花の名はダイアンサス。
いつしかその花は、『不死をもたらす花』と噂されるようになりました。」


―――それを聞いた欲深い人間達の手で、花は無残にも摘み取られてしまいました。
女神はその痛ましさに、激しく憤りました。
彼女の怒りに呼応して茨はうねり、不逞の輩を絡めとり、その鋭い棘で貫きました。

そうして森は『魔ノ森』と恐れられるようになりました―――

「………吟遊詩人?」

子どもたちに語りかけるように紡ぐのは、何処かの物語。
まるで吟遊詩人のようだと思ったが、少年はそのようには見えない。
旅人ではあるが、それ以前に戦士のようにすら感じる。

はて、と疑問に思うグライヴをよそに、少年は物語を語り続ける。

「―――そんなある日のこと。
また一人の若者が、この哀しみの森に入り込んできました。
シャラノワールは、いつものように荊で森を守ります。
が、澄んだ目をしたその若者は一向にひるむ気配がありません。

そうして青年、リュグは苦難の末に女神の元へ辿り着きました。
奇跡の森で、運命の森で導かれるように二人はめぐり合いました。

二人は戸惑いながらも心を求め合い、絆を育んでゆきました。
互いを、分かち阻むものは何も無いかのように思われました。」


―――けれどある日。
噂の森を厭った人々に火を放たれ、森が跡形もなく焼け落ちてしまいました。

女神の嘆きは深く、リュグのどんな慰めの言葉もその心には届きませんでした。

しかしやがて時が経つと、女神の周りには一面綺麗な花が咲き乱れるようになります。
けれどシャラノワールは嘆いて、その場を決して動こうとはしません―――

「二人の想いがすれ違い続けた、ある日のこと。
リュグは少し遠くに出かけるからしばらく帰らないと言い、出て行きました。
シャラは何も言わず、いつもどおりその場を動きませんでした。

それから三日が経ち、五日が経ち………。
リュグが帰ってこないことに、だんだんと不安になってきました。
そうして、あっという間に1ヶ月が経ってしまいました。

シャラはもう流石に居ても立ってもいられなくなり、その場を動いて探し始めました。
けれど、森中を歩いてリュグを探しましたが、見つかりませんでした。

三十二日目の夜、ついにシャラは泣き出してしまいました。
リュグが居ないことが、こんなに寂しくて不安で辛い事だとは思わなかったのです。
そしてあまりの悲しさに荊の森を作り、その中に閉じこもってしまいました。

―――茨の海の奥、深い森の奥で独り、女神は青年を待ち続けています。
もう一度出逢えれば頑なな心は解け、森は喜びを取り戻せるでしょう。」


そこまで少年は話すと、すぅっと息を吸って。

「愛する女神シャラノワールの元へ、もうすぐ青年は帰り着くでしょう。
傷だらけの体に希望を満たして、小さな神樹の苗を手に………。

深く生い茂った森の奥で、ひとつの物語が終わりを告げます。」


―――どうやらこれで、物語は終わりらしい。
この後、女神と青年がどうなったのか………まぁ、皆の想像にお任せするとしよう。

「………ん?シャラノワールって確か………。」

と、その物語を聞き終わり、ハッと気づいたグライヴ。
そう、さきほどの“シャラノワール”というのは、確か。

「そうだ、武道大会の名称。“シャラノワール杯”だっけ。」

近々ダンバで行なわれる武道大会の名称だった。
そして優勝商品として贈呈されるのが“ダイサンサスの花”。
物語に出てきたように不死をもたらすことはないが、特殊な効果があるのは確かな花。

「………あ。もしかして、これって………。」

そこまで思い出して、グライヴはあることに思い至った。
そう、もしかして。

「………よし。戻って姫に聞いてみよう。」




Next Story...Act 19 「武道大会(覇道を進め!)」


×××××

今回、本文中に用いた曲
「EXEC_PAJA/.#Misya extracting」
(えぐぜぐ・ぱーじゃ みしゃ えくすとらくてぃんぐ)
出典:アルトネリコ、歌手:志方 あきこ


「シャラノワールの森」
出典:謳う丘~Ar=Ciel Ar=Dor~、歌手:志方あきこ

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